「里奈の物語」のあらすじとを感想

小説

東洋経済オンラインなどで記事を書いているルポライターの鈴木大介さんの書いた小説の「里奈の物語」です。

本のあらすじ


里奈は、実母から伯母さんの幸恵さんに預けられて、幸恵さんの娘の比奈の世話をしながら暮らしています。
幸恵さんが自動車部品店や飲み屋で働いている間は、倉庫で比奈の世話をして、幸恵さんの仕事が終わると、家に帰れます。
ある日、産みの母の春奈が東京から戻ってきて、いろいろと騒いでから新たに産んだ雄斗と琴美も預けていったので、4人を幸恵さんと飲み屋の経営者の志緒里さんで育てようとしますが、景気の影響で店の売り上げが減ったことが原因で、幸恵さんが詐欺を働いて警察に捕まります。
そのため里奈と雄斗は児童養護施設に入ることになります。

中学生になった里奈は、単身で上京し、施設の先輩のもとに身を寄せますが、自分のお金は自分で稼がないとならないので、出会い系サイトで稼ぎ出します。
そうしているうちに、グループで分業して活動している業者と知り合いになり、里奈自身も自分のグループを持つことになります。
どのグループにも、親などから虐待され逃れている少女が沢山いるのでした。

本から学んだこと


いかに親に養護されない子供たちが大変なのかがよく解る小説でした。
ルポライターの鈴木大介さんが実際に見たことのある人たちをもとにして書いた小説とのことです。
主人公の里奈の周りにも、様々な人物が出てきますが、そのような人が実際にどのような人なのかを知ることが出来ました。
もともとまともに養育しない親は結構いたのでしょうが、経済的な影響で、育てようとも育てられない親も増えているとのことです。
特に地方都市の繁華街などは、景気の影響を大きく受けて困窮している人がコロナ禍の前からかなりいるとのことが解りました。

本を読んで、今後参考にしたいこと・役立てたいこと


何かと親による児童虐待や、子供の犯罪などのニュースを目にしますが、その背景にはどのようなことがあるのかを知ることが出来て良かったです。
何かと厳罰化が叫ばれていますが、経済的に困窮して、稼ぐ能力がない人は、一定の割合で自分が犯罪を犯したり、子供を虐待したり、自分の子供を児童養護施設に預けたりする方に行くことが解りました。
児童相談所も保健所も、人手不足とのことですが、社会保障の大事さがよく解りましたので、公的セーフティーネットを広めようとする人たちを支援しようと思いました。

本の感想


どのような人たちが景気の影響を受けやすく、困窮しやすいか、また、そのような養育者のもとにいる子供たちがいかに大変かが解りました。
子供向けのセーフティーネットの必要性がよく解る一冊です。
ルポライターを長年やってきた著者だから書けたものでしょう。

週刊文春オンラインで、この小説がコミックとして「アンダーズ:里奈の物語」というタイトルで隔週で連載が始まったので読んでみようと思いました。
さらに公認心理師の制度が出来たことで、児童相談所や心理センターなどの臨床が今より行政と繋がる様になればいいと思います。

本のイマイチだったところ


あくまで著者がこれまで取材した相手をもとにして書いたものなので、行政や警察がどのように彼ら、彼女らを見ているかが解りませんでした。
担当する警察の部署や社会保障を担当する市などの部署、教育委員会の方々への取材もあればもっと良かったです。

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